日時:2015 年 2月 28 日(日) 1:30~4:00
場所:ガレリアかめおか 3階第 4会議室
〒621-0806 京都府亀岡市余部町宝久保1−1
Tel 0771-29-2700
タイトル:
アメリカ史にみる職業着ー植民地時代~独立革命期
本報告ではアメリカの植民地時代から独立革命期の100年間にわたる職業着について語らせていただく。資料はP.F.コープランド著、濱田雅子訳『アメリカ史に見る職業着―植民地時代~独立革命期―』(せせらぎ出版、1998年)Peter F. Copeland, Working Dress in Colonial and Revolutionary America(Greenwood Press, Westport, Conn. 1977.である。コープランド氏の専門研究分野は、アメリカ独立革命やカリブ海の海底研究や18~20世紀の軍服や市民服に関する分野であり、元はアメリカ合衆国ワシントンD.C.のスミソニアン協会の歴史関係の主任イラストレーターをつとめておられた。そして、退職後はアメリカ史に関するフリーのイラストレーター、ライター、コンサルタ ントとして活躍され、論文や専門書の他、子ども向けの絵本30数冊を精力的に出版しておられたが、2007年12月8日に逝去された。コープランド氏の著作のなかでも一番の労作である本書には、彼自身が描いた200点を上回る挿絵と36枚の写真が収録されており、1710年から1810年までの100年間にわたって、欧米で労働に携わっていた人々が着用していたと推察される職業着が、歴史的背景や彼らの生活状態とともにビジュアルに描かれている。中産階級や下層階級の人々が、上流階級の華やかで、きらびやかな衣裳とは趣きを異にする、仕事の場面に特有な服装で労働に携わっている様相が、豊富な絵画資料によって再現されている。本書に登場する人物(合計424名)──船乗り、漁師、農民、商人、呼び売り、フロンティア開拓 者、御者、正規兵や民兵、医者、法律家、聖職者、使用人、年季契約奉公人、 奴隷、犯罪人、民族諸集団など──一人ひとりの仕事に取り組んでいる姿やしぐさや表情や、職種によって異なるさまざまな服装は、18世紀の欧米の中産階級や下層階級の生活の様相を彷彿とさせてくれる。
目 次
序章
第1章 船乗りと漁師
第2章 農民と農村労働者
第3章 職人と都市労働者
第4章 商人と行商人
第5章 フロンティア開拓者
第6章 輸送労働者
第7章 公僕
第8章 正規軍と民兵
第9章 知的職業人
第10章 使用人
第11章 年季契約奉公人と奴隷
第12章 犯罪人
第13章 民族に固有の服装
用語解説・参考文献・訳者あとがき・事項索引・人名索引
コープランド氏が収集した資料は、労働する姿を描いたヨーロッパのグラフィック・アートやアメリカの版画や逃亡奴隷を捕えるための広告や旅行者の明細書や糧食の注文書といったような原資料である。挿絵に対するコープ ランド氏の解説には、それぞれの衣服の説明、挿絵や版画の出典が示されて いる。彼は衣服や織物について、大変詳しく説明を加えており、スカート丈 やズボン丈、帽子の形、半ズボンよりも長ズボンが好まれたこと、また、ジャケットの裁断といったようなさまざまな変化に着目している。また、本文に続く包括的な用語解説では、18世紀の生活についての詳細を記述するために 歴史家が必要とするであろう言葉が要約されている。 以上に述べてきたように、コープランド氏の著作はアメリカ服装史研究の価値ある魅力的な業績であるが、今後、この研究は18世紀の文化史に関する研究および18世紀の中産・下層階級の衣服の実物に関する研究と統合される ことによって、さらなる発展が期待されるものと確信する。本書は服装史研究者の方々と歴史研究者の方々に、ぜひお読みいただきたい労作である。
(文責 濱田雅子)
アメリカの服飾に限らず、多民族の服飾文化(ヨーロッパ諸国、アジア諸国の服飾文化)に関する研究発表や講演、書評会、西洋服飾史・民族衣装セミナー、ワークショップ(デザイン画、手芸、コスチューム・ジュエリー制作など)を行って参りましたが、2020年より、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、上記の様な集いが持てなくなっています。そのため、会報発行、および、オンライン講座による持続可能な活動を行っています。下記より、お気軽にお問合せ下さい。ただし、研究会の趣旨に沿わないお問合せには、対応できかねます。