濱田雅子の服飾講座「服飾からみた生活文化」シリーズ17

現代アメリカの衣服産業について(その1)―オートクチュール、カスタムメイド、既製服をめぐって―

日時:2019年11月30日(土) 1:30~3:00

 

場所:ガレリアかめおか 3階第4会議室  参加費: 600円

〒621-0806 京都府亀岡市余部町宝久保1−1Tel 0771-29-2700

 

ゲストスピーカー: 濱田雅子

 (元武庫川女子大学教授 アメリカ服飾社会史研究会会長)

 

コーディネーター:児嶋きよみ

 

概要

濱田雅子の服飾講座「服飾からみた生活文化」もお陰様で、シリーズ17を迎えました。今後は、現代アメリカの衣服産業をテーマに、未来を見据えて、さらなる考察を進めてゆく所存でございます。

本講演では、パリモードの流れを組むカスタムメイドの推進者のアーノルド・スカージ(Arnold Scaasi,1930-2015)を取り上げます。カナダ生まれのファッションデザイナーで、我が国ではあまり知られていませんが、アメリカではファースト・レディ(マミー・アイゼンハワー、ジャクリーヌ・ケネディ・オナシス、バーバラ・ブッシュ、ヒラリー・クリントン、ローラ・ブッシュ)やハリウッド女優や1000人ものニューヨークセレブのオートクチュール・デザイナー、あるいはカスタムメイドのデザイナーとして著名です。濱田は、神戸ファッション美術館で開催された寄贈記念展「アーノルド・スカージ展 アメリカのオートクチュール・デザイナー」(2013年4月18日~7月2日)の企画協力者を勤めさせていただきました。そこで、本講演ではパリモードから「アメリカン・ルックへの転換」の一環として、カスタムメイドと既製服生産に携わっていたアーノルド・スカージの生い立ちと活動内容を取り上げました。

スカージはアメリカではカスタム・デザイナーと呼ばれています。パリモードの真髄をきわめながら、アメリカ社会の中流以上の諸階層の顧客をターゲットに、顧客層の経済力と趣向に上手く対応できる、独自の衣服生産システムを作りあげたのです。そこにこそ、スカージの特異性、ヨーロッパモードとの差異があり、スカージの魅力があると言えます。

ディオールなどの巨大産業としてのパリモードとは異なり、スカージは小規模ではあるが、ハイソサエティの生粋のセレブと1980年代に台頭してきたニュー・セレブの双方を虜にするアメリカ独自の、言わば、大衆的な「パリモード」を築き上げたのです。